盲導犬アンソニーがゆく!

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2008年01月14日

追憶〜ヨーコさんの感動体験記〜

追憶D.jpg追憶D 〜ヨーコさんの感動体験記〜

追憶D

 そんなどこにも辿り着けない気持ちを抱えながらも、私は普段と変わることなく、日々を暮らしました。好きな本や雑誌を読んだり、映画を観たり、絵画を鑑賞したり、友人とショッピングやブランチを楽しんだり、公園の散歩路でつい時間を忘れておしゃべりに高じたり、他愛のないことでお腹がよじれるくらい笑いこけたり、そしてなによりも大好きな気ままな旅へと出かけたりもしました。おそらく気後れがちになる気持ちを奮い立たせ、なんら変わりはないのだろうと、やがては失明してしまうかもしれない恐怖に臆することは何もないのだと、自分自身に言い聞かせては、見えている今を確かめていたかったのかもしれません。そんな日々の中で、突然目に映るすべてのものがとても愛おしく眩しく、なにもかもが輝きだして見え始めたのでした。春風の中で散り敷き急ぐ桜の花びら、ふと初夏の空に見上げた若葉のたどたどしい葉脈、小石を投げては幾重にも広がりゆく水面の波紋、さんざめく光りを放ちながら雪崩れ移ろう茜雲、淡雪の朝一番に敷かれた自転車のか細い轍までもが、初めて見るかのようにそんな当たり前の風景が、とてつもなく大切なもののように思え美しく見えだし、そんな小さな感動にすら思わず感極まって泣けたこともありました。いつかはそれらのものがこの目から消え去るときが本当にやってくるのだろうか、受け入れる心の準備を本当に必要とするのだろうか、やはり認めたくはないという思いがいつも心のどこかに潜み、反目しあいせめぎあっていたように思います。その頃、外出先から戻るなり必ずしていたことといえば、まず手あたり次第家中部屋中の明かりを点けること、障子の桟の升目がどの範囲まで見えているのか確認すること、そんな作業が日課となっていました。 あの頃は毎朝起きてはつい窓の方へと顔を向け、光りが判るとひどく安心したものでした。それは今でも続いている日課です。 

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