盲導犬アンソニーがゆく!

アンソニー(♂)  盲導犬アンソニーは、財団法人日本盲導犬協会より無償貸与されています。     

 

2007年09月27日

「そこにうずくまるモノ〜」

20070914.jpg「そこにうずくまるモノ〜」
 前から気になっていたモノ。それは5年前の秋、この駅を利用するようになってから。それはずっとそこにいる。音もなく声もなく。
今でも。
しばらくの長雨、いきおいよく広げた傘先は、
それをかすめて鈍い音と共に数本へし折れた。
くすんだ朱色の傘は重いけれど、懸賞で当たった大のお気に入り。
そのときで16年くらい愛用していた。
そこで初めてそのモノの存在を知ることになる。
なんだろう…その方へと手を伸ばし触れたモノは、
昔タイの小さな島で触れた象の頬にも似て、
大きくささくれだったいびつな樹木の肌だった。
タイで出会ったその象は、山で伐採した木を運ぶ
作業を手伝う母親象。私はシュノーケリングに飽きると、
ビーチづたいに森の麓にでかけその仔象と遊んだ。
2才半になるリンダはバナナが大好物。
ぼろぼろのバスケットを鼻でかかえ、もらえるまで盛んに
愛嬌をふりまいた。
母親象が帰るまでなつっこいリンダは、
あたりをスキップするように飛び回り、鼻を鳴らしては、
綺麗にデコレーションされた象タクシーより観光客の
人気をさらった。
陽が傾く頃、山から下りてくる母親象の頬は、
材木を運ぶためか擦り切れささくれだらけだった。
私は背伸びしてその母親象の頬を撫でてみたり軽く叩いてみたり。
彼女は私の持つ白い杖が珍しいのか、よく鼻先をつんつん押しつけてきた。
まつ毛がやたらと長くてその澄んだ眼には私の姿がはっきり映って見えた。
リンダは相変わらず観光客の周りをスキップしながらバナナをねだっている。 私は折れた傘より、その樹肌を傷つけてしまったのではないかと、
ハラハラしながらそっと撫でてみた。
やはり少し傷ができているようで、
以来必ず挨拶をかかさずその樹の前をかよっている。
 
ある日、意を決して改札に立つ駅長さんに尋ねてみた。
あれはいつからあそこにうずくまっているのですか〜。
すると駅長さんは思いのほか親切に、その古い樹木について
詳しく話してくれた。それは桜の木だった。
入ってくる電車は一時間に3本、午後2時すぎのことだ。
駅前の区画整理が進み、元々は駅の正面にあった桜の木を、
駅舎の隅に移し変えた。それからもう8年近くになる。
樹齢は定かではなく、かなりの老木で幹や枝のあちこちを
支えなければ立っていられないほど、今にも倒れそうな
バランスの悪い桜の木だった。
その姿は痛ましくも凛々しい
ばかりにうずくまっている。
桜はその場所に移されて以来、
あまり花をつけることもなくなり 幹や枝は勢いをなくし
盛夏ともなればまだ青い葉を落としてしまう。
駅舎の正面に在していた頃、その桜は四肢を大きく広げ、
それは鳥の翼のように伸びやかで、沢山の花をつけ幾人
もの乗降客の足を留めては、その笑顔を花明かりが照らした。
風がそよげば見事な桜吹雪が湧きあがり、
駅舎は歓喜とため息の渦で包まれたそうだ。
今年の春は思いのほか花が少なかったという。 
たとえ花一輪でも、そして一万輪だろうとも、
その桜の木にとってはいずれも満開…。
私には誇らしげに咲く満開の桜の木が目に浮かぶ。
後ろの正面に咲く桜、きっとその姿は美しい。 
そう、音もなく声もなく、頼りなさそうにうずくまって
いるすべてのモノたちへ、たくさんの桜の花びらが平等に
降り注ぎますように〜。
 それから私のお気に入りの朱の傘は、
便利やさんのお陰で元気になり、傷だらけだけど21年になる。
最近はうまく開けずに玄関の片隅でときどきうずくまったり
している〜。
 
20070330桜の木とアンコ.jpg
posted by アンコ at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
傘から樹木の肌、そして象の子供、桜の木。

どんどん読み進めてみたくなるような、最後がものすごく
気になるヨーコさんワールドにどっぷり浸っています。

桜の木は「静かにもの言わずにグッとこらえて生きているんだ」と
思わせる木ですね。
とてつもなく力強く大きく感じます。
私も、そんな風に生きられたらなと思います。

誰にだって嫌なことつらいこと悲しいことはあります。
それは皆同じ。だとしたら、泣き言を言ったり、愚痴をこぼしたり
人の悪口を言ったりなどしたくありませんね。

それにしても長持ち傘さんですね。

ヨーコさん素敵です^^



Posted by 栗 at 2007年10月04日 18:38
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