盲導犬アンソニーがゆく!

アンソニー(♂)  盲導犬アンソニーは、財団法人日本盲導犬協会より無償貸与されています。     

 

2007年09月03日

「みこころの前で」

20079.3.jpg「みこころの前で」

 地下の駅構内をでたとたん、ふいに
呼び止められた。
毎年クリスマスカードの交換はしていた
ものの、思いがけない旧い知人との再会に、
互いに驚き、あまりの懐かしさと、数十年ぶりの
偶然の対面に、何度も抱き合った。
宣教師の仕事で本土に出てきたという、
今はもう70代のご夫婦だ。
出会った頃のマダムは
髪が金色に透けるように輝き、
よく庭のハイビスカスを髪にさして、
いつも笑顔で島の生徒を迎える英会話塾の先生だ。
ご主人はヨットが大好きで、ときどきセーリング
に連れ出してくれては、日焼け止めにと私の
パールの口紅を塗りおどけてみせた、
お茶目でダンディな神父さんだ。
 
共に時間を持ち寄って構内のカフェに入り、
みんなでチーズケーキを注文した。
遙か南の島で暮らしていたとき、
当時島にある唯一の洋菓子屋さんで、
よくチーズケーキのホールを買っては
神父さんの家で食べた。
この二人には滞在中、
大変お世話になった。
ブレンドとアメリカン
が運ばれて一口すすり、どちらからともなく
開口一番、目のことを尋ねられた。
近況と事情をひとしきり説明したあと、
マダムはなんにも変わっていないと優しく私を
引き寄せ、神父さんは「グッド!ボウイ!」
とアンソニーの頭を撫でてくれた。
そこには昔と変わらない温もりが漂っている。
自然に昔の話へと弾み、やがて約束の時間
となり、別れ際にマダムから聞かされたこと…。
それは、アメリカにいる小さなお孫さんが難病
に犯されていることが分かり、孫の将来を悲観し、
そのとき生まれて初めて神を恨んだという。
神に仕える身でありながら、
神はいないのかと憎んだという。
自分たちのこととなるとこんなにも
もろいものかとも。
夕方の構内の
人混みの中で、二人は己を恥じ
情けないとも言った。
私は精一杯
背伸びして、二人は神さまの前でも、
何十倍も何百倍も人間くさくて、
そんなところが大好きだ、と伝えた。
すると神父さんは私の手をとって、
その自分の胸にゆっくりと十字をきり
「グッドラック!」と笑ってくれた。
二人はそういう事情からアメリカに帰国する。
今年のクリスマスカードはアメリカから
渡ってくるのだろうか。
そのカードから、
風をいっぱいにはらんだ、ヨットの帆の
はためく音が聴こえてきたら嬉しい。
二人と別れたあと、もう一度カフェへ戻り、
チーズケーキを買った。
今夜夫が帰ってきたら
懐かしい南の島の
しでもしてみようと思う〜。
 

20079.4`[YP[L.jpg


posted by アンコ at 00:00| Comment(3) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
偶然の対面・・私たちは偶然と思うけれど、それは、必然の出逢い、人生の中で計画されていた出逢いで、いつ、どんな時に会うのかも定まっている事なのかな〜。そして、心の、人生の糧になるのかな〜。
すばらしい出逢いですね!
Posted by ちわみ at 2007年09月07日 10:03
偶然の対面・・私たちは偶然と思うけれど、それは、必然の出逢い、人生の中で計画されていた出逢いで、いつ、どんな時に会うのかも定まっている事なのかな〜。そして、心の、人生の糧になるのかな〜。
すばらしい出逢いですね!
Posted by ちわみ at 2007年09月07日 10:06
私も偶然ではなく必然の出逢いのような気がします。

お互いにとって今出逢うべき時だったんだと。

そしてその出逢いをきっかけに、忘れていた過去を
ふと思い出してみたり、ヨーコさんのように
大切な人とゆっくり話してみたりすることは
まさに神様が与えてくれた時間なのかな。


Posted by 栗 at 2007年09月07日 11:19
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