盲導犬アンソニーがゆく!

アンソニー(♂)  盲導犬アンソニーは、財団法人日本盲導犬協会より無償貸与されています。     

 

2007年08月14日

追憶

  追 憶 part T

追憶 @ 


 それは仕事帰り、何気なく手渡されたチラシ
に目を落としたときから始まったのかもしれま
せん。
「日帰り人間ドック、半日コース始めました」
ちょっと手応えのある厚いチラシ、
「ランチ付き」と書いてある…。
午前中で検査が終わって
即診断、しかもランチが付いているなんて
いいかも。そんな軽い気持ちで早速友人を誘っ
て予約を入れ、人間ドックを受けに行ったの
でした。
身体測定から始まり、消化器系 循環器系
呼吸器系と検査が進み 眼底検査 聴力検査
ガン検査などがありました。すべての過程を終
え出されたお茶を頂きながら先生の診断結果
を待ちました。それは・・・・
「ヨーコさん、率直に言いますね。
目の一番奥にある網膜と、聴力に
問題があります。すぐ大きな病院で
再検査を受けることをお勧めします」と。
どういうことなのか質問しても、詳しい検査を
受けるようにと強く指導があるだけでした。
会計を済ませ食事券をもらい、友人とうなぎランチ
を食べながら一体なんだろう…と落ち着かない
気持ちで沈んでいました。
もちろん友人にはそのことは告げずに、お互い
の健康を冷たいビールで乾杯しました。
土用丑の日、
あぶらゼミ鳴く暑い暑い日でした。  


追憶 A
 

「こんなにも見えるのになぁ」としばらくは病院
へ行く気にもなれず、大好きな夏をエンジョイ
していました。
ある夜夫と花火を観にでかけました。
はやる気持ちを抑え、最初の花火が夜空に
広がる天を仰いで待ちました。やがて大きな
音を放ち大輪の花が目にいっぱい飛び込ん
できました。
ふたつみっつよっつ、音が続きます。
その方向へ視線を追う私の目が、
花火を捕らえていないことに気づきました。
何度も何度も目をこらし視線を漂わせ、
いつしかうちわを扇ぐ手が止まり、そのまま空
をぼんやり見上げていたように思います。
心の中にいつの間にか不信感が芽生え、
それはじわじわと広がりだしました。
花火の鼓動と自分の鼓動が重なり、
そこで初めて医師の言った言葉の意味が、
大きく胸に響いてきたのです、
それはあまりにも不意打ちでした。 
 


 

追憶 B    

 次の仕事の休みを待って、せかされるように、
地元の総合病院に向かいました。
眼科と耳鼻科を受診し、そこで医師から
告げられたことは、
「現在の医学では治療方法がない」こと。そして
「進行性でいずれは失明し耳も不自由になる」こと。
難病であることをあっさり告知され、
まったく実感がわかず、事の重大さを
受け止めかねていました。
経過観察のため
半年に一度の通院を勧められ
病院をあとにし、なんとなく近くの図書館に
立ち寄りました。
初めて聞くその病名、
閲覧室で医学書を広げ調べ
たものの、やはり要領を得ず宣告された言葉にも
実感がないままでした。とりあえず納得できるまで、
大学病院を片っ端から受診してみようと思いました。
  



追憶 C
 

両親にも夫にもそのことを打ち明けるには2年を費やしました。
なぜならいたずらに心配されても困るし、
一緒に泣いてほしい訳でもないし、
何よりも自分自身その病気をしっかり理解し、
病状がどのような過程を辿り進行してゆくのか、
そのつどの対応方やケアについてまず
診断を仰ぎたかったからでした。
しかし自分のそんな思いは届かず、
大学病院ではどこも同じ言葉が返ってきました。
「お気の毒ですが、早かれ遅かれいずれ失明します。
もううちでは何もすることはありません。
効果的な薬もありません。今後は地元の眼科で
引き続き経過観察を受けてください。
患者会や失明にあたってのケアは、
お住まいの役所にお尋ねください」と。
そのほとんどはそこだけ海の底のような、
眼科特有の薄暗い診察室の中でかわされる、
さも当たり前のような光景でした。
その頃見た夢はとても怖いものばかりで、
登場人物すべてに目がない…
そこだけポッカリ黒い深い穴が空いている
という恐ろしい夢でした。
自分の顔を鏡でのぞく私がいる…そ
こに映るのはやはり目がない自分の姿でした。
泣いていても笑っていても、
すべて夢の中に現れる人物は
目のないのっぺらな人ばかりでした。
ずいぶんとそんな夢におびやかされ、
眠れない夜か続きました。
冬だったのか夏だったのか、夜なのか朝なのか、
移ろいゆく季節もはっきりと思い出せない2年間でした。
 
posted by アンコ at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | ヨーコさんの感動体験記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ヨーコ姐。暑いですね。ブログ、拝見。会うとバカばっかり言っているので、姐の文章を読むと新しい発見があり、とても新鮮です。小生もHPを更新しなきゃ。
Posted by at 2007年08月13日 21:08
こんにちは〜みきです(-^〇^-) ヨーコさんにメールをいただき、早速ブログにおじゃまさせていただきました。 4月から開設してたんですね。 知りませんでした。 ヨーコさんとアン君にお会いするときはいつも明るく元気で、目が見えなくなったときのことをお聞きした事もありましたがこんなにも奥深い思いがあったなんて知りませんでした。 自分は目が見えている事を当たり前に思っていました。 というか、目が見えている事が当たり前だったので何とも思っていませんでした。 目が見えていることはとても幸せな事なのかも知れませんね。 澄んだ青空も綺麗な花を見ても何とも思わず日々を過ごしていました。 ヨーコさんとお付き合いさせていただく様になってからは、色々な事に気づかされます。 私は写真を撮ることが大好きだから、これからは綺麗だと思った物や思いでは残さず写真に収めていきたいなぁ〜と改めて思いました。 暑い夏が終わり涼しい秋になったら、またいつものメンバーとワンコを連れて公園にフリーランしに行きましょう!! 楽しみにしてます☆ またブログにお邪魔させていただきますね〜(*^^*) ☆みき☆
Posted by みき at 2007年08月14日 21:14
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